8.19.2014

映画 「おくりびと-Departures」

アカデミー賞を受賞した映画「おくりびと(英題: Departures)」は、同じ様に葬儀を舞台としたということで、伊丹十三監督の「お葬式」(1984年公開)を思い浮かべる。しかし、後者の作品と本作品の異なるのは、海外での評価が高いということと、定職に就くことの難しさ、という社会的問題を提起している点である。なぜ、「おくりびと」が海外で評価され、逆輸入という形で国内において再評価されているのか、また、就職難という社会問題について、416日、外国人記者クラブにおいて開催されれた滝田洋二郎監督の記者会見の様子をご紹介したい。


滝田監督のスピーチから

映画そのものに感謝している。日本映画について評価を頂いたことに感謝する。
この映画は先が見えない困難なものだった。納棺師自体がネガティブであるため、この映画は非常にデリケートな問題を抱えている。観客がどのようにこの映画を鑑賞するのか、分からなかった。
納棺の現場に立会い、何かが変化した。納棺に初めて立ち会った際、恐怖心を感じたが、その現場は、不思議な空気に包まれていた。残された人は多様な感情を持つ。泣いたかと思ったら、次には笑っているのである。この経験の後、潰れてしまったお風呂等、滅びて行くものに対して儚さを感じるようになった。撮影しにくい場所が最適な場所と感じるようになった。
最初は小さな映画館から上映し、結果として全てが成功したが、これは日本映画の中でも珍しい。映画の完成後、上映までに13カ月を必要とした。その間、周囲に愚痴を言っていたが、モントリオール映画祭で国際賞を受賞したため、次はオスカーを狙うと冗談で言ったら周囲が後押ししてくれた。
質疑応答
Q:なぜ、13カ月を要したのか?
A:試写会を何度も実施し、口コミで映画の良さが広がった。
7月に新作に取り掛かる前、5月、6月にアカデミー賞に出品することを周囲に話をした。この映画の宣伝を担当していただいた達の熱意が凄かった。
Q:アカデミー賞の受賞スピーチは事前に用意したものか?また、次もアカデミー賞を狙うと言うが、どのような計画があるのか?
A:授賞式にまで出席して、受賞のスピーチを準備しない訳はない。周囲に振り回されず、自分を信用すればよい。私は自分が信用するものを大切にする。
人が覗きたくない所を覗くのが映画監督である。私には死生観がない。死をテーマとする作品に興味を抱く自分に興味を感じた。昔から日本人は皆が自宅で亡くなるのが普通だったが、現在は死から遠ざかっていると思う。
Q:アカデミー賞の受賞後と受賞前とでは態度が変わったか?
A:受賞後、数字が倍になった。
興行収益60億円は成功である。しかし、若者が観ればもっと数字に表れる。なぜ、若者は映画を観ないのか?もっと映画館へ
行きましょうと呼びかけたい。
Q:日本人も外国人も納棺師に興味を感じたのではなく、職探しを必要とする現在の深刻な状況に興味を感じたのではないか?
A:日本は地方から大都市に移動し、職を探す。現在はどこも仕事がない。特に地方の方が仕事がなく、切実な問題である。
納棺師の女性が主演の本木雅弘氏に演技指導をしたが、この納棺師に「なぜ、納棺師になったのか」と尋ねた時、「ただ社員になりたかっただけ」と返事があった。
どんな仕事でも、やらなければならないという深刻な現実がある。
Q:サムライ映画が外国人受けするが、この映画が世界でも受け入れられるのはなぜか?
A:極めて日本らしい映画だと思うが、なぜ、海外の人達に受け入れたかはわからない。万人に共通する感情(喜怒哀楽)が受け入れられてからではないか?死は世界万人、誰にでも訪れるものである。
普段、私達は死を感じない。そのため、この映画を通して自分の葬儀の練習になるのではないだろうか。
生きていくことは滑稽である。人が真面目な程、可笑しいと思って映画を撮影している。人には、他人の不幸は楽しい、という気持ちがあり、人はその感情と向き合った時に葛藤する。
タイトルを見ただけでは暗い映画だと思う。けれども、実際はコミカルである。これは観客を裏切りたかったためである。
Q::ドイツでは公開されているのか?
A:配給は決定しているが、具体的な公開日は未定である。フランスは5月の末、イタリアからは来週から公開される。
Q:国際映画祭で受賞しても、作品が国内では評価されない傾向があるがどうか?
A:なぜ、日本人が多く映画館で鑑賞しないのか、私も知りたい。
日本では多くの映画が製作され、その数は年400本となる。けれども、それらの多くが観られていない。なぜ、若者が映画館で映画鑑賞しないのか、分析する必要がある。
Q:グローバル化について映画人としての意見を聞きたい。現在進行しているグローバル化についてどう思うか?
A:専門家でないため、発言できない。けれども、自分が何を行いたくなくて、何を行いたいかは重要である。私の場合は日本人らしさ、が重要である。
Q:この映画のスタッフやキャストを見ると成功すると感じる。海外を意識したのか?
また、日本人が好む映画には1.サムライ 2.何か珍しいもの 3.死そのもの と考える。このことについてどう思われるか?
A:珍しいと言うことが何を指すのか分からない。また、海外の死について考えたことはない。日本で自殺が増えているが、死に対する価値観がゲームのようになってきているのではないかと恐れている。      
         
<記者会見の後で>
世界的な不況の影響で、映画のように職を選択できないケースが多く見られる。元チェリストの主人公が、いかにして納棺師の道を歩み、成長していくか、自分と重ねて考える人も多いのではないのか。監督が何度も口に出された「自分らしさ」とは、個性の大切さを問うものだと感じた。 (堀尾 藍)
                     滝田洋二郎監督
                      

8.14.2014

【お知らせ】新しいINDIGO MAGAZINEの誕生!

この度、INDIGO MAGAZINEのサイトを新しくリニューアルしました!

新しいURLは以下の通りです。
http://www.indigomagazine.jp/


新しくコンテンツを開設していきます。
これからもINDIGO MAGAZINEを宜しくお願い致します。
*これまで(過去)の記事もこのまま本サイトで閲覧出来ますが、新しい記事は上記HP
から更新、となります。

INDIGO MAGAZINE 編集長
堀尾 藍

             ***

We begin anew INDIGO MAGAZINE.Details are as given below:
http://www.indigomagazine.jp/

However, you can consult old articles on this OLD URL.
Editor in Chief of INDIGO MAGAZINE
Ai Horio

8.09.2014

【独占インタビュー】飯村豊外務省日本代表によるガザに対する日本の役割(3)


INDIGO MAGAZINE 編集長 
堀尾 藍   

Q4(INDIGO MAGAZINE):今後の日本のパレスチナ政策、イスラエル政策について教えて下さい。

 A(飯村日本代表): 
 大きく申し上げて2点あります。一つはパレスチナが将来国家として自立できるよう経済、社会等の基盤作りを支援すること、もう一つは二国家解決を目指す政治的なプロセスを側面から支えていくことであり、何れも重要だと考えます。 
外務省は平成22年11月24日に「中東和平に対する日本の立場」を発表しました。これまで、日本は和平実現のため解決しなくてはいけない問題につき断片的に言及していましたが、この文書は包括的に我が国の立場を述べたものです。
 
例えば、

我が国は,最的な解を予断するような一方的な更は,いずれの当事者によるものであっても,承できないとの立に立っている。我が国は,エルサレムを含むヨルダン川西岸においてイスラエルの入植活は完全に凍結されるべきとの立を再確認し,改めて,イスラエルにして,入植活の完全凍結を求め る。

とあります。この点は一貫してイスラエルに対して言ってきています。アメリカもオバマ政権の第一期には、例えばミッチェル中東和平特使(元上院議員)(George John Mitchell)が入植活動は凍結されるべきことを相当強い調子で言っていましたが、イスラエルのネタニヤフ政権は、否定的な態度をとってきました。
将来、2国家国家を作ろうとしても、将来のパレスチナ国家の中核となる肝心の西岸の地域にイスラエルの入植地が広まり、今では40万人前後のイスラエル人が居住し、虫食い状態となっています。そのため、自立的なパレスチナ国家の建設は時がたつにつれ難しくなってきています。占領地の現状変更は、国際法違反でもあります。入植地問題についての我が国の立場は安倍首相も、岸田外務大臣もネタニヤフ首相に直接伝えているところであり、世界中の多くの首脳も同様の立場を表明しているところです。パレスチナ人の入植地に対する怒りは私個人としても共感を覚えています。

                             (おわり)


      <参考資料>
外務省(中東和平に対する日本の立場)

 
飯村豊(いいむら ゆたか)
昭和211016日生、東京都出身
日本政府代表(中東地域及び欧州地域関連)。フランス大使、インドネシア大使、等を歴任。


*文責は堀尾藍にあります。

8.06.2014

「原爆の日」について

 69年前の今日、広島に原爆が投下されました。
私はこれまで2度、広島に訪れましたが(初めての学会発表は於長崎大学でした)、最初は広島大学で開催されたシンポジウムに出席するため、二度目はノーベル賞を受賞したツツ大司教(Desmond Tutu)やDalai Lamaが講演者である平和サミットに出席するためでした。
 これらの講演に出席をし、平和の重要性を再確認しましたが、原爆資料館に訪れ、当時の状況を学んだことの方が日本人の私にとって深く心に残っています。

 INDIGO MAGAZINEのタイトルの背景写真は昨年 Pearl Harborに訪れた際に撮影したものです。なぜなら、命の尊さをお伝えすると同時に、戦争は情報戦であり、また、歴史は戦勝者によって書き換えられる、というメッセージも込めてあります。

 INDIGO MAGAZINEは、主に国際関係を扱う電子マガジンですが、CIEによって検閲された日本の教育についての記事も掲載し、国内の課題も取り上げています。

 国際問題を通して、日本への影響等の記事を掲載すると同時に、日本の良さもお伝え出来れば、と考えています。
 INDIGO MAGAZINEが中立の立場であるためにも、多くの文献を読み、先輩方から学んでいます。

平和を願って。

INDIGO MAGAZINE 編集長 
堀尾 藍
         
 

8.01.2014

【独占インタビュー】飯村豊 外務省日本代表によるガザに対する日本の役割(2)


堀尾 藍(INDIGO MAGAZINE 編集長)
AI HORIO, Editor in Chief


7月24日、外務省の飯村豊日本代表(中東地域及び欧州地域関連)に対する独占インタビューを行わせて頂きました(於外務省政府代表室)。以下、インタビューの様子です。



Q:パレスチナ自治政府はイスラエル政府による攻撃に対し、どのような対応をしているのでしょうか?
A: 既に申し上げたように、(自治)政府はハマス側に働きかけたり、ハマスと関係の良いカタールや、国連事務総長、ケリー国務長官、アラブ連盟、日本を含む国際社会の多くの国々と接触し、速やかな停戦の実現に向けて全力を注いでいると思います。

Q:また、日本政府はどのような対応をされていますか?
A:停戦実現に向けて安倍総理のネタニヤフ イスラエル首相への働きかけの他、様々の努力をしていますが、従来から日本はガザ地区への支援を行っています。ここに、現在実施中の支援プロジェクトの資料がありますが、日本はかなりガザ地区に対し、支援を実施しています。資料を見てお分かりのとおり、日本政府は国際機関やNGO経由でガザ支援を行っています。
NGOについては、「パレスチナ子どものキャンペーン」などガザで活動している日本のNGOに政府は財政支援を行っています。NGOだけでは、財政的に不足するため、政府が支援しているものです。
また、これに加え現在の緊急事態に対応するため、新たな支援を検討中です。

Q(補足1):なぜこの2つのNGOに特化しているのですか?
A:この2つのプロジェクトに特化している訳ではありません。良いプロジェクトを実施しているNGOはできる限り支援をしたいと思っています。例えば、シリア難民に対す支援ですと、Peace winds Japan等、多くのNGOに支援しています。

Q(補足2):この資料の国際機関経由の支援の一覧によると、UNRWAへの支援額が他の機関よりもかなり大きくなっています。それは医療支援が要因でしょうか?
A:いえ。一般的な難民に対する支援は、以前、緒方貞子氏が高等弁務官を勤められた国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が行っていますが、パレスチナの難民支援はUNRWAThe United Nations Relief and Works Agency for Palestine Refugeesが行っています。医療や学校といった教育の支援も行い、行政の役割を担っています。そのため、UNRWAは一番支援ニーズが多いですし、UNRWAへの支援がなくなれば、子ども達の学校支援もなくなってしまいます。日本政府の国際機関を通ずるガザ支援は、UNRWA UNICEF UNDP等があります。また、食糧ですと、WFPに対する支援があります。
 以前、ガザでも、JICAの人達が入っていましたが、今は退避勧告が出ています。NGOの場合も、今、日本人スタッフは出国しており、現地職員のみです。西岸の方は様々なプロジェクトがあります。それは、国際機関経由もありますし、NGO経由もありますが、日本政府が直接実施しているプロジェクトもあります。


         写真 飯村豊日本代表(筆者撮影)


Q(補足3):日本政府ということはJICAですか?
A:そうです。JICAのオフィスがラマラ(Rām Allāh)、ジェリコ(Jericho)にもあります。
パレスチナの国家が樹立されるのが夢ですが、そのためには、持続的な経済活動が必要ですし、国家の様々な制度、例えば教育制度も必要です。今、一つ力を入れているのはプライベートセクターの活性化です。ジェリコ郊外で、農業加工団地(Jericho Agro- Industrial Park:JAIP)の建設を進めています。現在、第1フェーズを実施中で、最初の工場が来月から稼働する予定です。
 最終的に第3フェーズまで終わると、約7千人の労働者が雇用され、労働者の方々の家族も入れると約2万人の人々の生活を支えることになります。西岸の人口は280万人ですので(パレスチナ全体では約450万人の人口)、大規模なプロジェクトになります。
 最初に稼働するのは、オリーブのエキスで化粧品を作るためのもので、そのエキスを抽出するための工場が完成しつつあります。二番目に冷凍野菜工場を作っています。将来はこの工業団地の商品を、ヨルダン渓谷のアレンビー橋を渡ってヨルダンや湾岸へ輸出する計画があります。そうすると、外貨も稼げます。僕達は、それらのプロジェクトに力を入れています。もちろん、他のプロジェクトも実施しており、病院、学校を建設し、下水道を整備したりしています。また、将来は観光が発展することが望まれますので、JICAが観光プロジェクトを実施しており、この場合は国際機関を通じてではなく、二国間援助になります。
 パレスチナが国家として自立するために、世界中の国が援助を行わなければなりません。東アジア諸国が自らの経済発展の経験を踏まえ、パレスチナを支援していくことが重要だと思います。昨年の3月1日にパレスチナ開発のための東アジア諸国会議(Cooperation among East Asian Countries for Palestinian Development :CEAPAD)を日本のイニシアチブで作りました。2013年2月、東京で第1回目の閣僚会議が、また、今年の3月に、第2回目の閣僚会議がジャカルタで開催されました。日本からは岸田副外務大臣が共同議長として出席され、今後の支援の方針について話し合われました。日本がイニシアチブを取り、東アジアが一緒になり、パレスチナ支援を行う。今までのパレスチナ支援ですと、アメリカとかヨーロッパ或いはアラブの湾岸諸国が中心でしたが、これからはアジアの人達も力を合わせる必要がある、と考えます。
                  (つづく)

<参考資料>
JICA(JAIP)
Cooperation among East Asian Countries for Palestinian Development (CEAPAD)

■飯村豊(いいむら ゆたか)
昭和21年10月16日生、東京都出身
日本政府代表(中東地域及び欧州地域関連)。フランス大使、インドネシア大使、等を歴任。

7.25.2014

【独占インタビュー】飯村豊 外務省日本代表によるガザに対する日本の役割(1)

堀尾 藍(INDIGO MAGAZINE 編集長)


7月24日、外務省の飯村豊日本代表(中東地域及び欧州地域関連)に対する独占インタビューを行わせて頂きました(於外務省政府代表室)。以下、インタビューの様子です。

Q1(INDIGO MAGAZINE):現在、イスラエル政府はパレスチナの地区に対し、空爆及び地上戦を実行していますが、このことについてどう思われますか?

A(飯村代表): この背景には、昨年からアメリカのケリー(John Forbes Kerry)国務長官が仲介して、イスラエルとパレスチナ自治政府との間で行われてきた和平交渉が、残念ながら、4月末の期限切れを前にして失敗に終わってしまったということがあります。従来、我々が言って来たのは、和平プロセスは非常に重要で、それはなぜ重要かと言うと、二つあり、第一には、イスラエルとパレスチナの二つの国家が平和に共存し、お互いに繁栄して行くという「二国家解決」を実施するため、現在考え得る唯一可能な道であるということ、第二には、和平プロセスが進んでいることが、暴力を抑制するための重要な要素であるとの点です。
 前者(イスラエルとパレスチナの二カ国が平和に共存し、お互いに繁栄すること)の「二国家解決」の実現のためには1.国境問題、2.エルサレムの問題、3.イスラエルの安全保障をどう確保するのか 4. 600万人いるパレスチナ難民の帰還、などの極めて困難な問題を解決しなくてはなりません。この二つの理由から、日本だけではなく、ヨーロッパの人達、特に、イギリスの外相のウィリアム・ヘイグ(William Hague)やEUの外交政策担当のアシュトン(Ashton)も和平交渉の推進が重要であることを強く言っていましたが、結局はイスラエルの3人の少年及びパレスチナ人の少年1人が犠牲になったことがきっかけで、暴力が再発してしまいました。この暴力の悪循環を止めるべき、と強く思っています。
 ハマスがロケットによってイスラエルへの攻撃を行い、それに対し、イスラエルが空爆、更には地上戦を行い、特に遺憾なのは、ガザの人々達、市民の人達が何百人と犠牲になっており、本当に痛ましい状況になって来ています。そのため、一刻も早くこういった状況を止めることが必要であり、国連事務総長をはじめ各国の指導者が必死の努力を行っています。昨日、安倍首相がネタニヤフ首相に申し入れを行いましたし、私どもの岸外務副大臣がエジプト、イスラエル、パレスチナへ訪問し、働きかけていますが、残念ながら依然として、武力行為が続いています。
 丁度現在、アメリカのケリー国務長官、パン・ギムン(Ban Ki-moon)国連事務総長が現地入りをしていますが、やはり重要なことはエジプトの仲介であり、また、その成功を祈っていますが、まだ残念ながらそれが出来ていません。一昨年はムルシー(Mohammed Mursi)がエジプト大統領だったため、ムスリム同胞団とハマスの繫がりで、仲介が出来ました。今回もやはり、エジプトが外交努力をするのに適任ではないかと考えます。
 後は、ハマスとの関係で、カタールを通して語りかける、それと同時にパレスチナ自治政府がハマスに停戦を呼びかける。また、イスラエルに対しては、アメリカ、ヨーロッパ、あるいは国際社会全体が「軍事行動は自制すべきである」と呼びかけることが重要です。
 それがまだ、実を結んでいないため、毎日数多くの死傷者が出るという誠に残念な状況になっています
                               (つづく)







 (写真 筆者撮影)


■飯村豊(いいむら ゆたか)
昭和21年10月16日生、東京都出身
日本政府代表(中東地域及び欧州地域関連)。フランス大使、インドネシア大使、等を歴任。

7.13.2014

駐日フランス大使によるパリ祭(Fête nationale)

  7月12日、東京のアンスティチュ・フランセにてパリ祭(Fête nationale) が開催された。パリ祭とは毎年7月14日に開催されるフランスの独立を祝う国民的祝典である。

  Christian Masset 駐日フランス大使は昨年来日した François Hollande大統領について、「大統領と安倍首相は博愛の精神で一つの協定を結んだ」と言及した。その協定とは、フランスの大学で修学した際、国内の大学でも単位を認定する、という内容のものである。また、「同じ価値観を共有しながら、日本とフランスは同じ方向性に向かって歩んでいる」と日仏の関係を指摘した。



Ambassadeour de Fcance au Japon, Christian Masset

   大使は、今月、任期を終えることになっており、帰国後は外務省の事務次官のポストに内定している。

「日本とフランスに栄光あれ!」と大使は言葉を締めくくった(堀尾 藍)。

7.10.2014

世界銀行総裁による「開発分野におけるイノベーションの役割」

 7月10日、政策大学院大学にて「世銀総裁と語る:開発にイノベーションが果たせる役割とは」が開催され、世界銀行グループ総裁であるDr. Jim Yong Kimが「教育システムがどのようにすれば上手く機能するかは課題であり、日本ではその機能が上手く行っている」と指摘した。
フロアからは「なぜ貧困が良くないのか」と質疑があり、「ボリビアにてヘリコプターを利用した経験があるが、その地域では貧しい人達が携帯で写メールを撮影しているのが見えた。貧困者の人々も平等に機会を得たいと思っている」と世銀総裁は事例を提示した。


            世銀総裁のDr.Jiim Yong Kim

 1970年代から80年代にかけて多くの発展途上国が世銀による構造調整借款に依存し、ザンビア政府は1991年のチルバ政権の誕生により、世銀の構造調整を受け入れ、福祉や教育に対する予算削減が実施され、HIV/AIDSの感染者の増加が顕著になったといわれる。また、アフリカにおいて先進国のための換金作物が生産されるようになった背景にも、この世銀の影響が強い。
そのため、このような批判の声が上がるのは当然といえる。しかし、本プログラムのテーマであるイノベーション(技術革新)によって、貧困層の人達が平等にアクセス権を提供されることになるとすれば、人生の選択も多くなり、豊かさへの問いになるかと思われる。
 また、最近、世銀は"Learning from Megadisasters: Lessons from the Great East Japan Earthquake"という本を出版しており、日本の東北関東大震災の経験から災害リスクマネージメントを如何に取り組み、国際社会にアプローチするか、について課題を提示している。新しい世銀の動向にも注目である(堀尾 藍)。


7.01.2014

RAMADNから考察したイスラム文化

AI HORIO(Editor in Chief)

6月27日、エジプト大使館・文化教育科学局においてラマダンに関する講演会が開催された。ラマダンは一ヶ月間日没まで断食を行うイスラム教の伝統行事である。講演者のReem Ahmed氏によると「人間は欲望があるが、この期間は自分をコントロールする」という。また、同氏は「エジプトにおいてラマダンは文化的側面も強い」とし、その一例として、ラマダンで用いられるランプを紹介し、華やかなブリキ製やガラス製のランプに会場が魅了された。


(写真1)NHK教育テレビ「アラビア語講座」でお馴染みのReem Ahmed氏。上智大学の博士後期課程所属。


(写真2)「妊婦や体調不良の方はラマダンを行う必要はない」と寛容な側面を指摘した文化参事官のDr.Mohamed E.El ‐Sharkawi


(写真3)ラマダン中に家族や友人と一緒に食べる伝統的なお菓子クナーファ

日本では、ラマダンに対し、「無理な断食」といった固定観念があるが、実は日没後には家庭で美味しい料理を食べ、親戚や友人が集まる正月のような行事である。

イスラムは歴史深く、美しい文化が存在する。しかし、西洋との意識の齟齬がイスラム文化への理解を阻害している。
INDIGO MAGAZINEでは、イスラム文化、世界の文化の美しさを紹介していきたい。

6.23.2014

HOTEL RWANDA BY YVONNE CHAKA CHAKA


6月16日、アフリカ友好議員連盟によってホテルルワンダの上映会が開催された(於:衆議院議院会館)。ルワンダは人口1千200万人、その内80人の日本人が居住する。
在京ルワンダ大使館の一等書記官によると、「『ホテルルワンダ』の主人公はルワンダのヒーローの一人である。けれども、映画は脚色もある上、ホテルを中心に描写されている。」とし、ホテルの外、ルワンダ全土で行われた虐殺について想像をして欲しい、と口調を強めた。
また、「自分達の国で起こった虐殺のため、映画を鑑賞すると、感傷的になってしまう。しかし、ルワンダはこれからも課題はいっぱい残されている。」と未来への希望を語った。

マンデラ大統領がその歌声を賛美したとされる南アフリカ出身の歌手 Yvonne                Chaka Chaka氏。

一方、本映画を挿入歌を歌ったYovonne Chaka Chaka氏(MDGs大使、釜石ふるさと応援大使)は「マンデラ初代南アフリカ大統領が『人は憎むことを教えることは出来ないが、人を愛することは教えることが出来る』」と指摘した。

ベルギーからの独立後、ルワンダにおけるフツ族とツチ族の虐殺問題が勃発した。これは宗主国がマイノリティーの民族を優位に立たせ、マジョリティーの民族に対し、抑圧を行っていたが、独立後、抑圧を受けていたマジョリティーの民族が武器を持つ、という先進国による心理戦である。
この作品では、フランスが間接的に登場するが、ラジオを使用して心理戦を行ったのはフランス政府だと近年研究者から指摘されている。

資源が豊富な国には多くの先進国が介入している。現在、ルワンダは安定した生活を取り戻しているが、南スーダンは過去のルワンダと同様、豊かな資源を求めて多くの国や多国籍企業がむらがっている(堀尾 藍)。



6.18.2014

【記者会見】 「南スーダンの今」国連事務総長特別副代表による報告



AI HORIO(Chief in Editor)

617日、日本外国人特派員協会にて南スーダン担当国連事務総長特別副代表のトビー・ランザー氏(Toby Lanzer)が記者会見を行い、世界で一番新しい国である南スーダンの現状について現状報告をした。
メディアでは殆ど報道をされていないが、南スーダンでは大量虐殺が行われ、現在もその遺体が放置されたままだ。ランザー氏は現地の映像を交え、強い口調で現状の改善を訴えた。

ランザー氏は 「未来を構築するためには教育が重要だ」と指摘。(写真:筆者撮影)

同氏によると、「日本は、他のどの国よりも南スーダンに対して対応が早く、大使館を通じて我々にコンタクトを取ってきた。南スーダンにおいて、日本の技術者が保健衛生に関するインフラ整備を行っており、そのことによって、病気にならないよう生活改善がなされ、安全の構築にもつながっている」と指摘。また、南スーダンでは、他の紛争地域と同様、石油の埋蔵量が多いことで知られており、そのことによって中国やその他の国も石油の利権争いに介入していることを示唆した。

1991年、スーダンでは、アメリカで博士号を取得した政治家が反乱を起こしており、「博士の反乱」とも言われるクーデターも勃発している。海外留学を経験したアフリカの政治家の動向は、現地の政治にかなり大きな影響を及ぼす(堀尾 藍)。

6.15.2014

勉強会開催

この度、INDIGO MAGAZINE主催の勉強会を開催致します。

詳細が決まり次第、随時報告させて頂きます。

日程 2014年 9月
会場 調整中
パネリスト 国連大学教授 他