7.25.2014

【独占インタビュー】飯村豊 外務省日本代表によるガザに対する日本の役割(1)

堀尾 藍(INDIGO MAGAZINE 編集長)


7月24日、外務省の飯村豊日本代表(中東地域及び欧州地域関連)に対する独占インタビューを行わせて頂きました(於外務省政府代表室)。以下、インタビューの様子です。

Q1(INDIGO MAGAZINE):現在、イスラエル政府はパレスチナの地区に対し、空爆及び地上戦を実行していますが、このことについてどう思われますか?

A(飯村代表): この背景には、昨年からアメリカのケリー(John Forbes Kerry)国務長官が仲介して、イスラエルとパレスチナ自治政府との間で行われてきた和平交渉が、残念ながら、4月末の期限切れを前にして失敗に終わってしまったということがあります。従来、我々が言って来たのは、和平プロセスは非常に重要で、それはなぜ重要かと言うと、二つあり、第一には、イスラエルとパレスチナの二つの国家が平和に共存し、お互いに繁栄して行くという「二国家解決」を実施するため、現在考え得る唯一可能な道であるということ、第二には、和平プロセスが進んでいることが、暴力を抑制するための重要な要素であるとの点です。
 前者(イスラエルとパレスチナの二カ国が平和に共存し、お互いに繁栄すること)の「二国家解決」の実現のためには1.国境問題、2.エルサレムの問題、3.イスラエルの安全保障をどう確保するのか 4. 600万人いるパレスチナ難民の帰還、などの極めて困難な問題を解決しなくてはなりません。この二つの理由から、日本だけではなく、ヨーロッパの人達、特に、イギリスの外相のウィリアム・ヘイグ(William Hague)やEUの外交政策担当のアシュトン(Ashton)も和平交渉の推進が重要であることを強く言っていましたが、結局はイスラエルの3人の少年及びパレスチナ人の少年1人が犠牲になったことがきっかけで、暴力が再発してしまいました。この暴力の悪循環を止めるべき、と強く思っています。
 ハマスがロケットによってイスラエルへの攻撃を行い、それに対し、イスラエルが空爆、更には地上戦を行い、特に遺憾なのは、ガザの人々達、市民の人達が何百人と犠牲になっており、本当に痛ましい状況になって来ています。そのため、一刻も早くこういった状況を止めることが必要であり、国連事務総長をはじめ各国の指導者が必死の努力を行っています。昨日、安倍首相がネタニヤフ首相に申し入れを行いましたし、私どもの岸外務副大臣がエジプト、イスラエル、パレスチナへ訪問し、働きかけていますが、残念ながら依然として、武力行為が続いています。
 丁度現在、アメリカのケリー国務長官、パン・ギムン(Ban Ki-moon)国連事務総長が現地入りをしていますが、やはり重要なことはエジプトの仲介であり、また、その成功を祈っていますが、まだ残念ながらそれが出来ていません。一昨年はムルシー(Mohammed Mursi)がエジプト大統領だったため、ムスリム同胞団とハマスの繫がりで、仲介が出来ました。今回もやはり、エジプトが外交努力をするのに適任ではないかと考えます。
 後は、ハマスとの関係で、カタールを通して語りかける、それと同時にパレスチナ自治政府がハマスに停戦を呼びかける。また、イスラエルに対しては、アメリカ、ヨーロッパ、あるいは国際社会全体が「軍事行動は自制すべきである」と呼びかけることが重要です。
 それがまだ、実を結んでいないため、毎日数多くの死傷者が出るという誠に残念な状況になっています
                               (つづく)







 (写真 筆者撮影)


■飯村豊(いいむら ゆたか)
昭和21年10月16日生、東京都出身
日本政府代表(中東地域及び欧州地域関連)。フランス大使、インドネシア大使、等を歴任。

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