12.10.2008

寄稿  オバマ勝利ーケニアからの報告


オバマ勝利 2008年11月5日ケニア
横関祐見子 (
UNICEF東南アフリカ地域事務所),
By Dr. YUMIKO YOKOZEKI (
UNICEF, Southeast Africa Office) 
   
米国大統領選挙の結果が出た11月5日水曜日朝5時(!)からアメリカ大使公邸で大統領選の結果を見る「朝ごはんパーティ」があり、1000人近い人々が招待されました。私もご近所なので招かれて行きました。広い庭に設置された、いくつもの大型TVスクリーンの前にたくさんの人々が座って、まるでスポーツ観戦のようです。ケニアコーヒーの香りが庭を満たしている中、夜が明けてきて次第に明るくなっていきました。
大型スクリーンのCNNはアメリカの各州の様子を映して結果を発表します。その間に、世界各地の模様も紹介されて、ケニアの様子(ナイロビの大使公邸とオバマの父親の出身地であるコゲラ村)が映し出されると、大きな歓声です。
朝日がのぼりきった7時にオバマの勝利決定、ウオーという歓声と拍手、これまでにケニアで見たことのないような興奮でした。ケニア人は西アフリカに比べて結構、物静かな人が多いと思ったのですけれど、大変な盛り上がりよう。私も一緒に行った同僚も、知らない人たちと抱き合って喜びました。こんなお祭りは久しぶりです。
在ケニア米国大使のマイケル·レネバーガー氏は大変に戦略的な外交官です。スーダンや西アフリカ諸国にも赴任したことがあり、アフリカ通であることを活かして、外交団代表として政府と強く交渉します。ラマダン中にはイスラム教徒の要人たちをイフタール(断食明けの夕方の食事)に招待したりしています。米大統領選挙パーティも、このような大使館の計画でしょう。ケニアの人々の心をつかむ絶好の機会となったと思います。それにしても、2週間前にソマリアの国連施設や米国寄りとみなされているエチオピアに関連する施設が自爆攻撃にあっている中で、よくやったなあと感嘆です。
今朝のパーティにはナイロビ市内の中学生たちがたくさん招かれていました。制服を着てスクールバスで来た中学生たちはお行儀よく座っていましたけれど、オバマ勝利の瞬間に飛び上がって喜んでいました。"Yes, I am proud and am happy!" "I also want to be the President of the USA" "Obama is our hero" 等と話してくれました。このような歴史的な瞬間を経験したことが、この若者たちの一生を変えていくかもしれません。暗いニュースの多い中で、ケニアの若者たちが「希望」や「努力」や「達成」を目の当たりにすることができたことは素晴らしいと思います。
続いてアメリカ大統領選についての学生エッセイコンテストの結果が発表されました。若者たちの希望に満ちた声を聞きながら大使公邸を出て職場に向かいました。職場でも、同僚たちがお祝いムードです。2008年のケニアは、総選挙の後の暴力で暗い年明けとなりました。その後も石油の値上がり、食料の値段暴騰、ソマリアの治安の悪化、コンゴの内戦復活などの危機的な出来事が続く中で、明るいニュースです。これを足がかりに少しでも肯定的な変化を望みたいと思います。少なくともエチオピアとエリトリアの関係とソマリアでの内紛にはオバマ外交に期待したいです。
米国史上初の黒人大統領という以上に、ケニア人の父親を持ちインドネシアで育ったオバマが米国の大統領になるということは大変なことであると思います。米国の大統領選挙が21世紀のグローバル化の意味を具体化するものとなりました。そして、ケニアの人たちが国中で喜びを示したのは、このようなグローバル化の中にアフリカが主体的に入っていくことの価値を示唆するものであるとも見ることができるでしょう。
オバマ勝利直後のナイロビの町は「勝利の喜び」に満ちていました。これから生まれる赤ちゃんの多くはオバマやバラックと名づけられるとか。皆が嬉しそうな顔をしているので、我が家の犬たちもオンオンと喜んで吠えていました。

横関祐見子(YUMIKO YOKOZEKI), UNICEF東南アフリカ地域事務所
教育開発の研究者。前職はJICA専門家。
a former senior advisor in education for JICA (Japan International Cooperation Agency)

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